夜中の三時に気づいた、多言語が持つ「ひらく力」のこと

先月の終わり、真夜中に目が覚めて、ぼんやりとスマホを眺めていたときのことだ。窓の外では冬の冷たい空気が静かに流れていて、部屋の暖房が切れかけているせいか、指先がじんわり冷えてくる。こんな時間に起きているのは、考え事があったからではなく、単に昼寝をしすぎたせいだった。
ふと、数日前に出会った中国人の青年のことを思い出していた。彼は日本に来て三ヶ月ほどで、仕事中に突然体調を崩してしまった。近くにいた私たちは、どうにか助けようとしたのだが、彼は日本語がほとんど話せず、私たちも中国語はまるでわからない。スマホの翻訳アプリを使いながら「病院」「痛い」「どこ」といった単語を並べて、なんとか意思疎通を図った。結果的に、彼は近所のクリニックで診てもらえたのだが、そこに辿り着くまでの数十分は、なんとももどかしかった。
あのとき、もっとスムーズに医療施設を探せる方法があればと思ったのだ。そして、その思いが今、私たちがつくっている「YAKKANavi」という小さなサービスの根っこにある。
YAKKANaviは、近所の医療施設を多言語で検索できるツールだ。スマホで操作できるシンプルな設計で、日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語、ベトナム語など複数の言語に対応している。外国人の方が急に体調を崩したとき、旅先で困ったとき、あるいは外国人スタッフを雇っている事業者が「もしも」に備えたいとき、少しでも役に立てればと思って開発を進めてきた。
実は、このサービスをつくるきっかけになったのは、私自身の小さな記憶にもある。小学生の頃、父の仕事の関係で数ヶ月だけ海外に住んでいたことがあった。そこで風邪をひいたとき、母が必死に英語の辞書を引きながら病院を探していた姿が、妙に鮮明に残っている。あのときの母の焦りと、診察を終えたあとの安堵の表情。言葉が通じないということは、想像以上に心細いものなのだと、子どもながらに感じていた。
YAKKANaviには、ちょっとした工夫がいくつもある。たとえば、検索結果には医療施設の名前だけでなく、対応している言語や診療科目、営業時間、そして地図へのリンクも表示される。また、ユーザーが「今すぐ行ける場所」を探しやすいように、現在地からの距離順に並べることもできる。操作は直感的で、スマホに慣れていない人でも迷わず使えるように設計した。
開発の途中で、実際に外国人の方々に試してもらう機会があった。ある日、ベトナム出身の女性にデモを見せたところ、彼女は画面をスクロールしながら、ふと笑顔になった。「これ、私の国の言葉で出てる」と、少し驚いたように言ってくれた。その瞬間、ああ、これでよかったんだと思えた。技術的にどうこうというより、誰かの安心につながるものをつくれているという実感が、じんわりと胸に広がった。
ただ、開発中には笑える失敗もあった。最初のバージョンでは、地図表示の機能がうまく動かず、タップすると全然違う場所が表示されることがあった。テストしていたメンバーの一人が「これ、北海道の病院を探してるのに、なぜか沖縄が出てきたんだけど」と真顔で報告してきたときは、思わず全員で吹き出してしまった。そんな小さなバグを一つひとつ潰しながら、ようやく今の形にたどり着いた。
私たちは大きな会社ではない。むしろ、個人事業主や中小企業の社長さんたちと同じように、限られたリソースの中で、できることを少しずつ積み重ねている。だからこそ、「これ、面白いね」「使ってみたい」と思ってもらえるものをつくりたいし、一緒に何か新しいことを始められる仲間を増やしていきたいと思っている。
YAKKANaviは、まだ完成形ではない。これから先、もっと対応言語を増やしたり、医療以外の施設にも広げたり、ユーザーの声を聞きながら進化させていくつもりだ。でも、根っこにあるのは変わらない。「言葉の壁を少しでも低くして、誰もが安心して過ごせる社会をつくりたい」という、ただそれだけの想いだ。
夜中の三時に考えていたのは、そんなことだった。窓の外では、街灯の光が静かに道を照らしている。冷えた指先をこすりながら、もう一度スマホの画面を見つめる。そこには、YAKKANaviのアイコンが小さく光っていた。明日もまた、誰かの役に立てるように、少しずつ前に進んでいこうと思う。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ
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