安否確認アプリに遺言機能を仕込んだら、予想外の使われ方をした話

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うちの会社、もともとは高齢者向けの安否確認アプリを作ってたんだよね。

開発のきっかけは、創業メンバーの一人が実家の母親と連絡が取れなくて焦った経験から。毎日スマホをタップするだけで「元気です」って家族に通知が飛ぶシンプルな仕組み。それが思いのほか評判が良くて、気づいたら数千人のユーザーがいた。ある日の昼休み、オフィスで弁当を食べながらエンジニアの田中が言ったんだ。「これ、もし本当に何かあったとき、伝えたいことって残せないのかな」って。最初は冗談半分で聞いてたんだけど、よくよく考えたら確かにそうで。安否確認って、つまり「いつか来るその日」を前提にしたサービスじゃん。だったら、その日が来たときに自動で開封されるメッセージ機能があってもいいんじゃないかって話になった。

エンディングノートのデジタル版を組み込むアイデア自体は、正直そこまで斬新じゃない。でも僕らがこだわったのは、それを安否確認と完全に連動させること。たとえば、3日間アプリに反応がなかったら自動的に家族にアラートが飛ぶ。そして一定期間を過ぎると、事前に登録しておいた「大切な情報」が指定した相手に届く仕組み。銀行口座、保険証券、パスワード一覧、取引先リスト。個人事業主なら屋号の由来とか、未完了の案件メモとか。そういうのを暗号化して保存しておけるようにした。

暗号化の部分は結構悩んだ。

セキュリティって、やりすぎると使いにくくなるし、緩すぎると怖い。最終的には軍事レベルの暗号化技術を採用しつつ、ユーザー側の操作は「登録ボタンを押すだけ」にした。データは分散サーバーに保存されて、復号キーは安否確認の反応状況と紐づいている。専門用語で言うとAES-256bitとかゼロ知識証明とか色々あるんだけど、まあ要するに「めちゃくちゃ堅い金庫に、本人が鍵を開けなくなったら自動で開く仕掛けをつけた」みたいな感じ。

で、これをリリースしたのが去年の秋口。

最初のユーザーは予想通り、高齢の親を持つ40〜50代が中心だった。ところが数ヶ月経ったころ、意外な層からの問い合わせが増え始めた。個人事業主とか、小さな会社の社長さんたち。彼らが使い始めた理由が面白くて。「自分に何かあったとき、取引先に迷惑かけたくない」「従業員に引き継ぎ情報を残したい」「でも普段から遺言みたいなの書くのは縁起悪いし、かといって何もしないのは無責任」って。つまり、生きてる間は意識しないけど、いざというときに自動で動いてくれる「ビジネス用の保険」として使ってるらしい。

ある利用者は、取引先ごとに「もし僕が返信しなくなったら、このメッセージを送ってください」っていう定型文を登録してた。別の人は、会社の銀行口座とネットバンキングのパスワードを奥さんに継承する設定にしてる。面白かったのは、ある飲食店のオーナーが、常連客リストと「この人たちには閉店の挨拶を必ず」っていうメモを残してたこと。

正直に言うと、僕らが最初に想定してた使い方とはちょっと違う。

もっとこう、家族への感謝の手紙とか、そういう感動的な方向を想像してたんだけど、実際はもっと実務的で、もっと切実で、もっと「明日も仕事は続く」っていう前提に立ってる。でもそれがすごくリアルで、なんかいいなって思った。だって、生きるってそういうことじゃん。いつか終わるけど、終わるまでは続くし、続く以上は誰かに迷惑かけないように準備しておく。

そういえば、この前取材を受けたとき記者に「これって結局、デジタル遺言サービスですよね」って言われて、ちょっとムッとした。違うんだよな。遺言って、死ぬことが前提じゃん。でも僕らがやってるのは、生きてることが前提のサービス。毎日元気にアプリをタップして、「今日も大丈夫」って確認する。その延長線上に、万が一の備えがある。順番が逆なんだよね。

田中は最近、自分の親にもこのアプリを勧めたらしい。「おまえが作ったやつなんか信用できるか」って最初は断られたって笑ってたけど、結局は使ってくれてるみたい。親父さん、元気な証拠に毎朝5時きっかりにタップしてくるらしくて、「几帳面すぎて逆に心配」とか言ってた。

情報継承の自動化って、突き詰めると「信頼の自動化」なのかもしれない。自分がいなくなっても、ちゃんと次の人に渡る。ちゃんと伝わる。そういう安心感を、技術で担保するっていうか。大げさに聞こえるかもしれないけど、小さな会社を一人で回してる人にとっては、結構切実な問題だと思うんだよね。

まあ、使ってみてよとは言わないけど。興味あったら覗いてみて...っていう感じ。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ

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