深夜2時に気づいた、自分のパスワードを誰も知らないという恐怖

会社のサーバーにログインできなくなったのは、去年の夏だった。
パスワードを変えたのは覚えてる。セキュリティ強化のために複雑な文字列にして、メモ帳アプリに保存したはず。でもそのメモ帳、どのデバイスに入れたっけ。古いスマホ? それとも壊れたノートPC? 結局、サーバー管理会社に電話して、本人確認に30分、リセット作業に1時間。真夏の午後、汗だくでキーボード叩きながら「これ、俺が倒れたらどうなるんだ」って本気で思った。
個人事業主とか中小企業の社長って、たいていこういう爆弾を抱えてる。銀行口座のパスワード、クラウドサービスのログイン情報、取引先との契約書がどこにあるか、外注先の連絡先リスト。全部、自分の頭の中か、自分しかアクセスできない場所にある。
で、エンディングノートって知ってる? 最近よく聞くやつ。「もしものときのために」って、資産とか希望とかを書き残すノート。正直、最初は「まだ早いでしょ」って思ってた。だって40代だし、健康診断も問題なしだし。
ところが知り合いの社長が、50代で突然入院したんだよね。脳梗塞。幸い命に別状はなかったんだけど、しばらく意識が戻らなくて。奥さんが会社のパソコン開けようとしても開けない、通帳がどこにあるかわからない、取引先から電話来ても誰に何を伝えればいいのかわからない。結果、事業が2ヶ月ストップ。復帰したときには主要顧客が3社離れてた。
そういう話を聞いて、僕もエンディングノート買ったんだけどさ。
書けないんだよ、これが。だって情報が多すぎる。ネットバンキングだけで5つ、クラウドストレージ3つ、会計ソフト、顧客管理システム、ドメイン管理、レンタルサーバー。パスワードを全部書き出したら、ノート10ページ超えた。しかもこれ、紙に書いて大丈夫なの? 誰かに見られたら? いや、見られるために書いてるんだけど、でも生きてる間に見られたら困るし。
矛盾してるよね。残すために書くのに、残したくない。
最近見つけたサービスが面白くてさ。安否確認とエンディングノートが連動してるやつ。定期的に「元気ですか?」ってメールが来て、一定期間反応しないと、登録してある情報が自動で指定した人に送られる仕組み。
情報は暗号化して保存されてるから、運営側も中身は見れない。で、自分が反応しなくなったときだけ、家族とか信頼できる人に情報が開示される。自動的な情報継承、って言うらしい。
正直、最初は「なんか不吉じゃない?」って思ったけど、よく考えたら合理的なんだよ。だって普段は誰にも見られない。自分が動けなくなったときだけ、必要な人に必要な情報が届く。紙のノートだと、どこにしまったか忘れるとか、火事で燃えるとか、逆に誰かに勝手に読まれるとか、リスクだらけだし。
あ、そういえば昔、友達が「秘密のノート」を親に見つかって大騒ぎになったことあったな。中学生のとき。内容は恋愛ポエムだったらしいんだけど、本人は「これは小説の構想だ」って言い張ってた。関係ないけど。
このシステム、使い始めてから気づいたんだけど、情報を整理する過程が意外と役に立つ。どのパスワードがどのサービスで、更新時期はいつで、重要度はどれくらいか。一覧にしてみると、「これ、もう使ってないじゃん」ってサービスが山ほど出てくる。解約したら月額料金が年間で8万円くらい浮いた。
それに、情報を言語化するって作業自体が、事業の棚卸しになるんだよね。「このクライアント、今後どうするんだっけ」とか「この契約、更新する意味あるんだっけ」とか。普段は目の前の仕事に追われて考えないことを、立ち止まって見直すきっかけになる。
エンディングノートって名前がよくないのかもね。「終わり」って言葉が入ってるから、どうしても縁起でもない感じがする。でも実際は「今を整理するツール」って感じ。生きるための準備というか。
安否確認の通知、最初は週1回に設定してたんだけど、今は月2回にしてる。通知が来るたびに「あ、生きてるな俺」って確認できるのが、なんか悪くない。返信するだけだから10秒で終わるし。
万が一、返信しなかったとき。たとえば事故とか病気とか、予想外のトラブルで動けなくなったとき。自動で情報が引き継がれて、事業が止まらない。従業員がいる会社なら、給料の支払い情報とか、取引先リストとか、そういうのが届けば、最低限は回る。
完璧なシステムではないと思う。でも、何もしないよりは確実にマシ。
深夜2時、ふと目が覚めて、スマホでパスワード管理アプリを眺めてた。登録件数147件。これ全部、俺の頭の中にしかない情報だったんだよな、少し前までは。
今は、もし何かあっても大丈夫。そう思えるだけで、なんか少し、肩の力が抜けた気がする。
朝になったら、また通常営業。でも夜中に感じた安心感は、たぶん本物だと思う。多分ね。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ
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