朝のコーヒーと、見えない安心のデザイン

事務所の窓から差し込む秋の朝日が、デスクの端に置かれたコーヒーカップをゆっくりと温めていた。まだ誰も出社していない時間帯、キーボードを打つ音だけが静かに響いている。こういう時間が、実は一番好きだ。
私たちがつくっているのは、目に見えない安心のかたちだと思う。それはシステムとかプラットフォームとか、そういう硬い言葉で語られることが多いけれど、本質的には「誰かのために何かを残す」という、ごく人間的な営みに近い。
たとえば、安否確認とエンディングノートが連動しているという仕組みがある。これは単なる機能の組み合わせではなくて、人の生活と記憶、そして未来への想いをつなぐ設計だ。日常の中で「生きている」という信号を送りながら、もしもの時には大切な情報が自動的に継承される。それはまるで、誰かがそっと手紙を預かっていてくれるような感覚に似ている。
先日、ある個人事業主の方と話をした。彼は自分の事業を一人で切り盛りしていて、取引先や顧客との関係も全部頭の中に入っている。「もし自分に何かあったら、誰も何も分からなくなる」と、少し困ったような笑顔で言っていた。その言葉には、責任感と同時に、孤独のようなものも混じっていた気がする。
情報は暗号化して保存している。これは技術的な話だけれど、同時に信頼の話でもある。誰かの人生の記録や、事業の核心に触れる情報を預かるということは、それだけで重い意味を持つ。だからこそ、見えないところでしっかりと守る仕組みが必要になる。暗号化という言葉は冷たく聞こえるかもしれないが、それは「あなたの大切なものを、誰にも触れさせない」という約束でもある。
カップを手に取ったとき、少し熱すぎて思わず指先を離してしまった。慌てて持ち直す自分の動作が、妙に滑稽に思えて、誰もいないのに少し笑ってしまった。
子どもの頃、祖父の書斎に入ると、いつも古い帳面が積まれていた。そこには取引先の名前や、手書きのメモがびっしりと並んでいて、祖父にしか分からない暗号のようだった。「これが全部、俺の財産だ」と祖父は言っていたけれど、それは数字や契約書のことではなく、関係性や信頼の記録のことだったのだと、今になって分かる。
私たちがつくろうとしているのは、そういう「記録の継承」を、もっと自然に、もっと確実にするための仕組みだ。自動的な情報継承というのは、ただデータが移動するという話ではない。それは「あなたがいなくなった後も、あなたの想いや関係性が途切れずに誰かに届く」ということ。
中小企業の社長と話すと、よく「後継者がいない」という悩みを聞く。でも、それは人の問題だけじゃなくて、情報の問題でもある。どこに何があって、誰とどんな約束をしていて、何を大事にしてきたのか。そういうことが伝わらなければ、どんなに優秀な人が後を継いでも、継ぎようがない。
コーヒーの香りが、少しずつ部屋に広がっていく。この香りもまた、記憶の一部になるのかもしれない。
私たちのサービスには「ライフアーカイブ」という名前をつけた。アーカイブという言葉には、保存するだけじゃなくて、未来に手渡すという意味が込められている。それは図書館の書庫に似ているかもしれないし、誰かに託す手紙に似ているかもしれない。
何か楽しいことをやっているかと聞かれたら、正直に「楽しい」と答えられる。それは派手なことをしているからではなく、誰かの人生の大切な部分に触れさせてもらえるという、静かな喜びがあるからだ。
安否確認という言葉は少し事務的に聞こえるけれど、それは「あなたは今日も元気ですか?」という問いかけでもある。そしてエンディングノートは「もしもの時に、これだけは伝えたい」という想いの結晶だ。それが連動しているということは、日常と非日常が、生と死が、ひとつの流れの中にあるということ。
窓の外で、誰かが自転車のベルを鳴らしている。朝の街が、ゆっくりと動き始めていた。
一緒に仕事をしてみたいと思ってもらえるだろうか。それは、私たちが何か特別なことをしているからではなく、ただ誠実に、丁寧に、誰かの大切なものを扱おうとしているからかもしれない。技術は手段であって、目的ではない。本当に大事なのは、その向こうにいる人の顔を想像できるかどうかだ。
コーヒーを飲み干して、新しい一日が始まる。今日もまた、誰かの安心をかたちにするために、キーボードに向かう。それは地味な作業の積み重ねだけれど、その先に誰かの笑顔があると信じている。
組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ
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