誰も教えてくれなかったデジタル遺品の話、というか僕らが作ってるやつの話

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父親の携帯のパスワード、誰も知らなかったんだよね。

あれは3年前の秋口だったと思う。取引先の社長が突然入院して、会社のサーバーにアクセスできる人が誰もいなくなった。従業員は10人くらいの小さな会社で、みんな右往左往してた。結局、IT業者を呼んで強制的にアクセスしたらしいんだけど、その費用が馬鹿にならなかったって後から聞いた。笑えない話だよね、でも他人事じゃない。

僕らが今作ってるサービスって、そういう「まさか」のときに自動で情報を引き継ぐ仕組みなんだけど、正直最初は半信半疑だった。安否確認とエンディングノートを連動させるって発想自体は面白いと思ったけど、本当に需要あるのかなって。でも調べれば調べるほど、個人事業主とか中小企業の社長って、自分が倒れたら全部止まっちゃう構造で仕事してる人が多いことに気づいた。

銀行口座のパスワード、取引先のリスト、サーバーの管理画面、SNSのアカウント。全部頭の中か、せいぜい手帳に書いてあるだけ。

ある日、開発チームでランチしてたときに、エンジニアの田中が「暗号化ってどこまでやる?」って聞いてきた。コーヒーの湯気が立ち上る小さな会議室で、僕らは何時間も議論した。情報を預かる以上、セキュリティは絶対に妥協できない。でも、ガチガチに固めすぎると、いざというときに誰も開けられなくなる。このバランスが本当に難しくて、何度も設計を書き直した。最終的には、多重の暗号化と、複数の認証キーを組み合わせる方式に落ち着いたんだけど、そこに至るまでの試行錯誤がまた楽しかったんだよね。

そういえば、僕自身も昔、大事なデータを全部外付けHDDに入れてて、それを落として壊したことがある。真っ青になって、データ復旧業者に持ち込んだら30万円って言われて。結局諦めたんだけど、あのときの絶望感は今でも忘れられない。だからこそ、バックアップとか情報管理の大切さって身に染みてわかってるつもり。

で、安否確認の部分なんだけど、これがまた面白い仕組みでさ。定期的に本人に通知が行って、反応がなかったら段階的にアラートが上がっていく。最初は「あれ、返信ないな」くらいで、徐々にエスカレーションしていって、最終的に事前に登録した人に情報が開示される。この「段階的」ってのがミソで、誤作動で情報が漏れないように、かなり慎重に設計してある。

正直、こういうサービスを作ってるって言うと、縁起でもないとか、まだ早いとか言われることもある。気持ちはわかる。でも、保険だって、火災報知器だって、使わないに越したことはないけど、あったほうがいいでしょ?それと同じだと思ってる。

開発の途中で、ベータテストに協力してくれた50代の社長さんがいて、その人が言ってたのが印象的だった。「これ、家族のためじゃなくて、従業員のために入れたい」って。自分に何かあったとき、従業員が路頭に迷わないように、取引先との関係を引き継げるように。その言葉を聞いて、ああ、これは単なる「終活ツール」じゃないんだなって腑に落ちた。

情報の自動継承って言葉にすると冷たい感じがするけど、要するに「あなたが築いてきたものを、ちゃんと次に渡す」ってこと。

実装してて一番悩んだのは、UIだった。エンディングノートって聞くと、どうしても重苦しいイメージがあるじゃん?だから、できるだけシンプルで、日常的に使えるような画面設計を心がけた。スマホでサクッと情報を更新できて、パスワード管理ツールとしても普通に使える。そういう「日常に溶け込む」感じを目指してる。

暗号化の話に戻るけど、僕らが採用してる方式だと、サーバー側でも中身は見られない仕組みになってる。鍵を持ってるのは本人と、指定された継承者だけ。だから、僕ら運営側が悪意を持ったとしても、情報は取り出せない。このへんの技術的な説明をすると長くなるから省くけど、とにかく「預けたデータは誰にも見られない」ってのは徹底してる。

最近、知り合いの経営者が「デジタル終活」って言葉を使ってて、ああ、そういう表現もあるのかって思った。でも個人的には、終活って言葉自体があまり好きじゃない。なんか、終わりに向かって準備するみたいな響きがあるから。僕らが作ってるのは、どちらかというと「継続のための道具」なんだよね。あなたがいなくなっても、あなたが作ってきたものは続いていく。そのための橋渡し。

まあ、こんな感じで日々あれこれ試行錯誤しながら作ってるわけだけど、完璧なものができるとは思ってない。使う人によって必要な機能も違うし、セキュリティと利便性のバランスも永遠の課題だし。ただ、少なくとも「誰もパスワード知らなくて困った」みたいな状況は減らせるんじゃないかな、と。

夕方の打ち合わせで、デザイナーが新しいアイコンを提案してきた。なんか、前より柔らかい感じになってて、いいかもしれない...。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ

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