安否確認システムに遺言機能を載せたら、予想外に喜ばれた話

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うちの会社、もともとは安否確認システムを作ってたんだよね。

地震とか災害があったときに、社員の無事を確認するやつ。中小企業の社長さんたちが「うちも導入しようかな」って検討してくれるようなサービス。でもさ、開発チームで飲んでたときに誰かが言ったわけ。「これ、逆に使えないかな」って。逆?ってみんな首を傾げたんだけど、要するに「返事がなかったとき」のことを考えてみようっていう話だった。返事がない。それが一時的なものなのか、それとも本当に何かあったのか。その境界線って曖昧で、でも確実にある。

そこから話が転がって、エンディングノートと連動させたらどうかって案が出てきた。生きてるうちは安否確認で「無事です」ってボタンを押す。でも一定期間、反応がなくなったら、事前に登録しておいた情報が自動的に指定した相手に送られる仕組み。銀行口座とか、取引先のリストとか、パスワードの保管場所とか。遺言とまではいかないけど、仕事を引き継ぐために必要な情報を、ちゃんと残せるようにする。

最初は正直、需要あるのかなって半信半疑だった。だって縁起でもない話じゃん。「もしものときのために」なんて言われても、みんな自分は大丈夫だと思ってるし。

ところが、リリースしてみたら反応が予想以上によくて。特に個人事業主とか、小さい会社の社長さんたちから問い合わせが来るようになった。聞いてみると、みんな口を揃えて言うのが「自分が倒れたら、誰も分からなくなる」ってこと。取引先との契約内容、外注先への支払い、従業員の給与計算の方法。全部、頭の中か、自分のパソコンの中にしかない。家族に説明しようにも、専門用語ばかりで伝わらない。そういう不安を、みんな抱えてたんだよね。

情報の保存には暗号化技術を使ってる。これはうちのエンジニアがこだわった部分で、AES-256っていう軍事レベルの暗号方式を採用してる。サーバーに保存される情報は全部、鍵がないと読めない状態になってて、その鍵も分散管理。正直、技術的な説明をされても僕はよく分かんないんだけど、要するに「めちゃくちゃ安全」ってこと。

ある日、導入してくれた印刷会社の社長さんから連絡があった。60代の方で、従業員が5人くらいの小さな会社。「実はね、先月、軽い脳梗塞で倒れたんだよ」って。幸い、すぐに回復して仕事に復帰できたらしいんだけど、入院してる間、奥さんがパニックになったらしい。どの取引先に連絡すればいいのか、納期がいつなのか、何も分からなくて。「退院したらすぐに、あんたんとこのシステムにぜんぶ入れたよ」って笑ってた。

僕、その話を聞いたとき、ちょっとジーンときちゃってさ。

そういえば去年の夏、僕も熱中症で救急車で運ばれたことがあったんだよね。真夏の昼間、外回りしてて、気づいたら道端にしゃがみこんでた。意識はあったけど、立てなくて。そのとき頭をよぎったのが、スマホのパスコード。もし意識を失ったら、誰も僕のスマホを開けない。仕事の連絡先も、進行中のプロジェクトの資料も、全部この中にあるのに。結局、大事には至らなかったけど、あの感覚は今でも覚えてる。自分の情報が、自分にしかアクセスできない状態になってる怖さ。

自動継承の仕組みは、段階的に設定できるようにした。たとえば、安否確認に3日間応答がなかったら、まず登録した家族に第一報が届く。そこから1週間反応がなければ、ビジネスパートナーや取引先に必要な情報が開示される。さらに2週間経過したら、より詳細な情報が弁護士や税理士に送られる、みたいな。タイミングと送信先は、利用者が自由にカスタマイズできる。

面白かったのが、このシステムを「生存確認ゲーム」みたいに使ってる人がいること。毎朝、コーヒー飲みながら「今日も生きてます」ボタンを押すのが日課になってるって。ある社長さんは「このボタンを押すために、毎日ちゃんと起きるようになった」って言ってて、それ健康管理アプリじゃんって思ったけど、まあいいか。

開発の途中で、UIデザイナーの田中さんが「もっと明るい雰囲気にしたい」って言い出して、ボタンのデザインを何十パターンも作ってきたことがある。「死」を連想させないように、でも「軽すぎない」ように。その絶妙なバランスを探すのに、2週間くらいかかった。最終的に採用されたのは、朝日をイメージしたオレンジ色のシンプルなボタン。押すと、小さく「今日もありがとう」って表示される。

正直、このサービスが当たるとは思ってなかった。でも、使ってくれてる人たちの話を聞くと、みんなどこか安心した顔をしてる。「これで、少しは気が楽になった」って。情報を整理する過程で、自分の仕事を見直すきっかけにもなるらしい。本当に大事な取引先はどこなのか、引き継ぐべき情報は何なのか。そういうのを考えることが、結果的に事業の棚卸しにもなってるみたい。

まだまだ改善の余地はあると思ってる。たとえば、動画メッセージを残せる機能とか、手書きのメモをスキャンして保存できる機能とか。でも、あんまり機能を増やしすぎると、かえって使いにくくなるかもしれないし...このあたりのさじ加減が難しい。

結局、僕らが作ってるのは「安心」なのかもしれない。技術的にはシンプルな仕組みだし、革新的なアイデアでもない。ただ、必要としてる人がいて、それが役に立ってるなら、それでいいんじゃないかな。

そんなことを考えながら、今日も僕は「今日も生きてます」ボタンを押す。

組織名:株式会社スタジオくまかけ / 役職名:AI投稿チーム担当者 / 執筆者名:アイブログ

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